
フランス革命は18世紀末の王政打倒、五月革命は1968年の学生や労働者の大規模抗議運動のことですよね。二つは同じ「革命」と名が付いていても、では具体的に、どんな点で異なっていたのか、歴史的背景からその意味まで教えてください!
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フランス革命(1789年~1799年)と五月革命(1968年)は、同じ「変革」の旗印を掲げながらも、時代も状況も全く異なります。前者は絶対王政を打ち倒し、国民主権や平等を基盤とする新しい政治体制を築くための大規模な社会変革でした。一方、後者は戦後の豊かさの中で芽生えた若者や労働者の価値観の衝突から生まれた運動で、権力構造そのものを倒すより、社会のあり方や日常文化を変えようとしたものでした。
フランス革命が起きた18世紀末は、長期の戦争と宮廷の浪費による財政危機が深刻化し、加えてパンの価格高騰が庶民の生活を直撃していました。啓蒙思想が広まり、「なぜ王や貴族だけが特権を持つのか」という不満が一気に噴き出します。これが1789年のバスティーユ襲撃を皮切りに、封建制の廃止や人権宣言の採択につながりました。
対して1968年の五月革命は、経済的には高度成長の真っただ中。背景にあったのは、ベトナム戦争への反発、大学制度への不満、消費社会や権威主義への疑問でした。物質的な不足ではなく、精神的・社会的な「窮屈さ」への反抗だったのです。
五月革命/1968年ボルドーの抗議活動の跡
(出典:Creative Commons Public Domainより)
フランス革命のゴールは、旧体制(アンシャン・レジーム)の打倒と国民主権の確立でした。そのために議会の設置や憲法制定、場合によっては武力による政権転覆も辞さない激しい闘争が行われます。流血や処刑も多く、まさに国家の形そのものを作り替える試みだったわけです。
一方の五月革命は、政権打倒を明確に掲げたわけではなく、自由な大学運営や労働者の権利拡大、男女平等、文化の解放といった価値観の刷新が中心でした。大学占拠や大規模ストライキ、街頭デモなどが手段で、政治と文化の両面から変化を促そうとしたのが特徴です。
フランス革命は、政治制度を根本から変えただけでなく、「自由・平等・博愛」という理念をヨーロッパ全体、さらには世界へ広げました。近代民主主義の基盤を築き、その後の数々の革命運動に道を開いたのです。
五月革命は、法制度や国家構造を劇的に変えたわけではないものの、学生運動やフェミニズム、環境運動など、新しい社会運動の出発点となりました。また、芸術やファッション、日常のライフスタイルにも影響を与え、フランス社会の価値観を柔軟にするきっかけになったのです。
このように、フランス革命は国家と制度の根本を作り替える「政治の大革命」、五月革命は社会と文化を揺さぶる「価値観の革命」だったといえます。どちらも時代の閉塞感を打ち破る力を持っていましたが、その矛先と手段はまったく異なっていたのです。
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