
フランス革命って、いろんな劇的な場面や人物が登場するので、絵画にもたくさん描かれていると聞きました。
当時の出来事をテーマにした有名な作品や、後の時代に描かれたものでもいいので、フランス革命を象徴する絵画をいくつか紹介してほしいです。どんな場面が描かれていて、そこにどんな意味が込められているのかも教えてください。
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フランス革命は、まさに「絵になる」出来事の連続でした。その劇的な瞬間の数々は、画家たちの手によって歴史の記録としても、美術作品としても残されています。ここでは、特に有名で象徴的な3点の作品を紹介します。
1793年、革命派のジャーナリストであり政治家でもあったジャン=ポール・マラーが、浴槽の中で暗殺された事件を描いたのが、ジャック=ルイ・ダヴィッドによる『マラーの死』です。
マラーは皮膚病を患い、執務を浴槽で行っていたため、刺客シャルロット・コルデーに容易に近づかれてしまいました。ダヴィッドはこの瞬間を、まるで宗教画の聖人のように描いています。血まみれで絶命しながらも、手には民衆の手紙を持ち、静かな顔で横たわるマラーの姿には、革命の犠牲者としての美化が込められています。
『マラーの死』/ジャック=ルイ・ダヴィッド作
1793年の革命指導者ジャン=ポール・マラーの暗殺を描いており、フランス革命時の社会的緊張と政治的混乱を示している。
(出典:Creative Commons Public Domainより)
この作品は、政治的プロパガンダとしても、革命のドラマ性を伝える作品としても、非常に強いインパクトを放っています。
続いて紹介するのも、同じくダヴィッドによる作品『球戯場の誓い(Le Serment du Jeu de Paume)』です。これは1789年6月、第三身分の代表者たちが、国民議会の結成を宣言した歴史的な瞬間を描いたもの。
建物への立ち入りを王に拒まれた彼らが、テニスコートに集まり、「憲法が制定されるまで絶対に解散しない」と誓いを立てたのです。この出来事は、王権に対して民衆が初めてはっきりと自分たちの政治的主体性を宣言した瞬間として、フランス革命の始まりを象徴しています。
『球戯場の誓い』/ジャック=ルイ・ダヴィッド作、1791年
フランス革命の象徴的な瞬間を描いたこの作品は、革命初期の重要な出来事、球戯場の誓いを描いています。革命的な情熱と団結の精神が感じられる作品。
(出典:Creative Commons Public Domainより)
この絵は未完成のまま残されていますが、群衆のエネルギーと団結が、まさに絵からあふれ出すような力強さを持っています。
最後に紹介するのは、1830年の七月革命をテーマにした作品『自由を導く民衆』。ウジェーヌ・ドラクロワが描いたこの作品は、1789年のフランス革命の理念や精神を象徴的に表現しています。
中央に描かれているのは「自由」を象徴する女性像。この人物は古代ギリシャの自由女神を彷彿とさせながら、銃を掲げ、国旗(三色旗)を振って民衆を先導しています。周囲には市民兵、労働者、学生、さらには子どもまでが描かれ、「自由のためなら誰もが立ち上がる」というメッセージが込められているのです。
『自由を導く民衆』/ウジェーヌ・ドラクロワ作、1830年
1830年革命で掲げられたフランス革命の理想『自由、平等、博愛』を象徴的に描き、民衆が再び自由を求めて立ち上がる姿を表現
(出典:Creative Commons public domainより)
この作品はフランス革命の直接的な場面ではありませんが、その精神を次の世代がどう受け継いだかを強く示しています。
フランス革命をテーマにした絵画は、その時代の空気や感情、理念を目に見える形で伝えてくれる貴重な手がかりです。
ダヴィッドのように革命を内側から支えた画家もいれば、ドラクロワのように後世から理想を再解釈して描いた画家もいます。
いずれも、絵を通して「この瞬間に人々は何を感じ、どう動いたのか」を私たちに語りかけてくれるんですね。
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