
フランス革命には多くの有名な革命家が登場しますが、表に立って演説したり、民衆を動かした人物たちの陰で、実は裏から革命を操っていた「黒幕」のような存在もいたんじゃないかと思っています。たとえば思想で人々を動かした人とか、裏から権力に近づいた人とか…。そういう“表に出にくいけれど、革命を裏で動かしていた人物”がいたら、詳しく教えてください!
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フランス革命というと、バスティーユ襲撃や王の処刑といった劇的な場面にばかり目がいきがちですが、実はその裏側では、じわじわと時代の流れを変えていった人物がいました。表では目立たずとも、アイデアや戦略、影響力で大きな方向転換を仕掛けていた人──そんな「黒幕」的な存在こそが、エマニュエル=ジョゼフ・シェイエスです。
さらには、当時の知識人たちに影響を与えたフリーメイソン的な思想の広がりなど、表には出にくい動きも革命に関係していたと考えられています。
まず「黒幕」の代表格として注目したいのが、聖職者であり思想家でもあったシェイエス。彼は1789年、革命が本格化する直前に『第三身分とは何か』というパンフレットを発表します。
この中で彼は、「国家を支えているのは貴族でも聖職者でもない。第三身分(=平民)こそがフランス社会の土台である」と主張し、身分制度の根本的な問い直しを迫りました。
このパンフレットは大ヒット。あちこちで読まれ、民衆の間に「私たちが主役になっていいんだ」という意識が一気に広まります。つまり、革命の“空気”をつくったのがシェイエスだったと言っても過言ではありません。
彼自身は前に出て民衆を率いたわけではないものの、舞台の設計図を描いた人――それがシェイエスの立ち位置なんです。
エマニュエル=ジョゼフ・シェイエスの肖像
「第三身分とは何か」を著し、フランス革命における社会的及び政治的変革の必要性を訴えた思想家。
(出典:Creative Commons Public Domainより)
シェイエスが「黒幕」と呼ばれるもうひとつの理由は、革命の終盤にもあります。
恐怖政治が終わり、総裁政府が混乱していた1799年、彼は政界に舞い戻り、「新しい政治体制を作るべきだ」と密かにクーデターを画策します。
そこで白羽の矢が立ったのが、当時イタリア遠征から帰国したナポレオン・ボナパルト。
シェイエスは彼を利用してブリュメール18日のクーデターを実行し、総裁政府を崩壊させ、自らは統領政府の一角に食い込むことに成功します。
ところが、ナポレオンの勢いはシェイエスの想定を超えており、やがてシェイエスは政治の表舞台から追いやられてしまうことに。
それでも、革命を起こす前も、終わらせる段階でも、大きな構想を裏で練っていたという点では、まさに「仕掛け人」的存在だったのです。
シェイエスのような思想家と並んで、よく名前が挙がるのがフリーメイソンとの関係です。
18世紀後半のヨーロッパでは、啓蒙思想とフリーメイソンの思想が近い関係にありました。「自由」「平等」「博愛」といった理念は、どちらにも共通して見られます。
実際、革命に関わった多くの人物――ラファイエットやミラボー、さらには初期の王党派政治家までもがフリーメイソンの会員だったとされています。
もちろん、フリーメイソン自体が革命を直接指導したという確証はありません。でも、こうしたネットワークや思想の広がりが、革命を支える土壌になったことは確かです。
「自由な社会を目指す」という共通のビジョンを持った人々が、表に立つより先に、裏で時代の空気を変えていた――まさに、「見えない立役者たち」だったのかもしれません。
プロビデンスの目
フリーメイソンリーにおいて広く認識されている象徴。全知の目を表し、しばしば三角形や光輪に囲まれて描かれる。
(出典:Creative Commons Public Domainより)
このようにフランス革命の「黒幕」といえば、構想力と戦略で時代を動かした思想家シェイエスがまさにその筆頭です。
彼は民衆を先導したわけではありませんが、言葉で革命を始め、策略で政権を動かした知の立役者でした。
そしてその背景には、当時の思想的ネットワークや秘密結社的なつながりもあったかもしれません。
つまりフランス革命は、表で旗を振った人たちだけでなく、静かに“仕掛けていた”存在たちによっても進められていたんです。
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