フランス革命が国民国家成立のきっかけになった理由

フランス革命が国民国家成立のきっかけになった理由

フランス革命は国民を政治の主体とする考え方を広め、国民統合の象徴として国家を再定義した。徴兵制が国民意識を高め、国旗や国歌が国家への帰属心を強めたのである。本ページでは、フランス革命が国民国家の成立に与えた影響を理解する上で重要なこのテーマについて、さらに詳しく掘り下げ解説していく。

「国民国家」という言葉を世界史の授業で聞いたんだけど、いまいちピンと来てない……。それと「フランス革命」がどうつながるのかもよくわからない。国王が倒されて共和制になったのはわかるけど、それがどうして「国民が主役の国家=国民国家」っていう考え方につながるの? 革命でいったい何が変わったのか、はっきり教えてほしい!



フランス革命は、ただの政権交代ではありませんでした。それまで「国家=王様のもの」だった価値観がガラリと変わり、「国家=国民みんなのもの」という近代的な考え方が広まるきっかけとなったのです。
つまり、フランス革命は国民国家の誕生を後押しした大きな転換点だったわけです。


国民が主役だと宣言した革命

フランス革命以前のヨーロッパでは、王様が神に選ばれた存在だとされ、国のトップとしてほぼ絶対的な権力を握っていました。でも、革命が始まった背景には、国民が「もっと声を上げるべきだ!」と立ち上がった強い理由があります。


その中心となったのが、1789年に発表された「人権と市民の権利の宣言」。ここには、「人は生まれながらにして自由で平等である」と書かれていて、国王ではなく“国民こそが主権者だ”という思想が明確に示されました。


それまで政治にほとんど関われなかった普通の人々が、「自分たちが国を動かす存在なんだ」という意識を持ち始めたことで、国家のあり方が大きく変わっていったんです。


Declaration of the Rights of Man and of the Citizen

人権と市民の権利の宣言/1789年
フランス革命の中心的な成果であるこの文書は、人間の普遍的な権利を宣言し、近代民主主義の基礎を形成、法体系の発展に大きな影響を与えた。
(出典:Creative Commons Public Domainより)


身分を超えて「国民」となった革命

それまでフランス社会は、貴族・聖職者・平民というはっきりと分かれた身分制度に基づいて動いていました。でもフランス革命では、この身分の壁が大きく崩れます。


身分に関係なく、すべての人が法のもとで平等だとされ、「フランス人=国民」として国家の一部を構成するという考え方が生まれたんです。
それはつまり、「フランスに暮らすすべての人々が、同じ国の一員であり、同じルールで生きていく」という国民国家の基礎が築かれたということ。


この変化は、言語・教育・軍隊などの制度にも反映されていき、地域や身分の違いよりも“フランス人としての一体感”が重視されるようになっていきました。
まさに、国民が国家の中心であるという考え方が、ここから本格的に動き出したわけですね。


その理念が国境を越えて広がった革命

フランス革命で生まれた「自由・平等・国民主権」という考え方は、フランスだけにとどまらず、ヨーロッパ各地や南米などの独立運動や民主化運動にも強く影響を与えました。


たとえば、19世紀にドイツやイタリアで起きた統一運動では、言語や文化を共有する人々が「我々は一つの国民である」と意識し始め、それを基盤に国をつくろうという流れが生まれます。


また、多民族が入り混じる帝国では、「私たちも自分たちの国家を持ちたい」というナショナリズム(民族主義)が高まり、国民国家の波が次々と広がっていきました。


だから、フランス革命は単なる政変ではなく、世界中に“国民国家というモデル”を広めたきっかけだったとも言えるのです。


このようにフランス革命は、「国王のための国家」から「国民のための国家」への歴史的転換点となり、国民国家という近代の基本的な政治モデルをつくる礎となりました。


革命によって生まれた「すべての人が平等で、国家はその国民全体のもの」という考え方は、現在の民主主義国家のあり方にも深く根付いています。


つまり、フランス革命は、ただフランスを変えただけではなく、世界の国のかたちを変える“思想の出発点”だったのです。