
フランス革命というと戦争や蜂起のイメージが強いですが、その中で暗殺事件も起きていたそうですね。特に有名なマラー暗殺以外にも、どんな政治的背景や人物が関わっていたのか──革命期に実際に起きた暗殺事件について知りたいです。
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フランス革命期(1789〜1799年)は、政治的対立が激化し、暴動や戦争だけでなく暗殺事件も発生しました。その多くは、派閥間の憎悪や政策の対立、あるいは個人的復讐が背景にあります。
もっとも有名なのが、ジャコバン派の急進的指導者ジャン=ポール・マラーの暗殺です。彼は新聞『人民の友』で政敵を名指し批判し、恐怖政治の推進役となっていました。ジロンド派支持者であったシャルロット・コルデーは、「彼の死が流血を止める」と信じ、入浴中のマラーを短剣で刺殺しました。コルデーは即日逮捕され、4日後に処刑されます。
ジャック=ルイ・ダヴィッドによるマラーの死/1793年
1793年ジャック=ルイ・ダヴィッド作。革命指導者ジャン=ポール・マラーの暗殺を描いており、フランス革命時の社会的緊張と政治的混乱を示している。
(出典:Creative Commons Public Domainより)
国民公会議員ルイ=ミシェル・ルペルティエ・ド・サン=ファルジョーは、国王ルイ16世の処刑に賛成票を投じた翌日に暗殺されました。犯人は元王党派の元近衛兵で、国王の死刑判決に報復する意図があったとされます。ルペルティエは革命の殉教者として葬られ、その葬儀はマラー暗殺と並ぶ象徴的事件となりました。
1790年代後半には、総裁政府期の不安定な政治状況の中で、ジャコバン派や王党派による暗殺未遂が相次ぎました。特にナポレオン台頭前夜には、政府高官や軍司令官を狙った計画が度々発覚しています。1799年のブリュメール18日のクーデター直前にも、派閥間の暴力的衝突が増加していました。
フランス革命期の暗殺事件は、単なる個人的犯行ではなく、多くが政治的メッセージや派閥間闘争と結びついていました。マラー暗殺のように芸術作品で後世に残った事件もあり、革命の激しい空気と人々の対立を象徴しています。
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