フランス革命とアメリカ独立革命の違いと共通点

フランス革命とアメリカ独立革命の違い

フランス革命による国内の身分制度解体は、市民社会の構築を目的としていたが、アメリカ独立革命は宗主国からの政治的・経済的独立を求める戦いだった。両者は自由や平等といった啓蒙思想の影響を共有し、近代的政治理念の発展に寄与した。目的や手段は異なりながらも、歴史的意義には重なる部分が多い。本ページでは、フランス革命の思想的背景や国際関係への波及を理解する上で重要なこのテーマについて、さらに詳しく掘り下げ解説していく。

フランス革命とアメリカ独立革命って、どちらも18世紀後半に起きて「自由」や「平等」を掲げた大きな出来事ですよね。でも、同じように見えて背景や目的、進み方はかなり違ったと聞きます。片方は王政打倒、もう片方は植民地からの独立が主な目的だったとも言われますが、実際にどこが似ていて、どこが決定的に違ったのか──そのあたりを整理して教えてもらえますか?



フランス革命(1789〜1799)とアメリカ独立革命(1775〜1783)は、同じ啓蒙思想の風を受けながらも、その舞台や目指す方向性はまったく異なっていました。アメリカは植民地が本国から独立する戦争として新しい国をつくることに成功し、フランスは国内の旧制度(アンシャン・レジーム)を打ち壊す革命として社会の根本を揺るがしました。似ているようでいて、ゴールは全然違ったんですね。


両革命の共通点

両者はともに自然権(人間が生まれながらに持つ権利)や人民主権(政治の権力は人民に由来する)といった啓蒙思想を土台にしていました。アメリカ独立宣言(1776)とフランス人権宣言(1789)は、ともに「すべての人は平等であり、生まれながらの権利を持つ」という考えを明文化した点でよく似ています。


さらにその理念は海を越え、ラテンアメリカやアジア、さらには20世紀の植民地独立運動にまで影響を与えました。つまり両革命は、一国にとどまらず「世界を動かす思想の発信源」になったんです。


また、どちらの革命でも知識人や法学者といったエリート層が大きな役割を果たしました。彼らは討論や文章を通じて理念を広め、憲法や制度の形で現実に落とし込んでいったのです。理念と制度がセットで進んだところは、両革命の大きな共通点でした。


アメリカ独立戦争のモンタージュ

アメリカ独立戦争のモンタージュ
アメリカ独立戦争の重要な瞬間を集めたコラージュ。様々な戦闘や歴史的イベントが描かれ、アメリカの独立への道のりを示している。
(出典:Creative Commons Public Domainより)


両革命の違い

アメリカ独立革命 フランス革命
時期 1775年 - 1783年 1789年 - 1799年
主な原因 イギリスの厳しい税金政策と自治権の欠如 社会的・経済的不平等、啓蒙思想の影響
主な影響 アメリカ合衆国の成立 王政廃止と共和制の導入
重要な戦闘 サラトガの戦い、ヨークタウンの戦い バスティーユ監獄の襲撃、トゥーロンの攻防
重要な人物 ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン ロベスピエール、ナポレオン・ボナパルト


フランス革命とアメリカ独立革命は、同じ啓蒙思想を背景にしながらも「何を目指したのか」「どう戦ったのか」「その後どうなったのか」で大きな違いがあります。アメリカは外からの支配を振り払って新しい国を建てることを目的としたのに対し、フランスは国内の不平等な仕組みを壊し、社会秩序そのものを作り替えることに挑んだんです。


目的と構造の違い

アメリカ独立革命の目的は、イギリス本国からの政治的独立でした。つまり「誰に支配されるのか」を変えることが中心で、独立しても植民地社会の構造は大きく動きません。たとえば奴隷制は存続し、女性の参政権も認められませんでした。新しい国をつくりはしましたが、社会全体が平等になったわけではなかったんですね。


それに対してフランス革命は、絶対王政を倒すだけでなく身分制度の廃止教会特権の解体など、社会の根本をひっくり返しました。目的は「誰に支配されるか」ではなく、「支配の仕組みそのものを変える」こと。だからこそフランス革命は、政治だけでなく文化や日常生活にまで大きな影響を与える壮大な社会実験となったのです。


手段と結末の違い

アメリカ独立革命は主に対外戦争(独立戦争)として進みました。植民地軍とイギリス軍の戦いが中心で、終結は1783年のパリ条約によってはっきりと区切られます。その後は1787年憲法制定を経て、比較的早く安定した統治体制へ移行しました。


一方フランス革命は、国内の政変や暴動と、ヨーロッパ諸国との対外戦争が複雑に入り乱れる展開でした。しかも10年間の間に王政、立憲君主制、共和制、独裁と政体が何度も変化する混乱ぶり。最終的には1799年のブリュメール18日のクーデターナポレオンが権力を握り、革命はひとまず終結しますが、その後は帝政へと突き進んでいきました。


こうして見ると、アメリカは「外からの独立」、フランスは「内側からの刷新」という違いが、手段や結末の対照的な姿を生んだと言えるんです。


The Coronation of Napoleon by Jacques-Louis David

ナポレオンの戴冠式/ジャック=ルイ・ダヴィッド作
国民の主権を象徴するアメリカの共和制度とは対照的に、ナポレオン自身が教皇から冠を奪ってかぶることで独裁的権威を誇示した出来事だった
(出典:Creative Commons Public Domainより)


つまり、アメリカ独立革命は「外に向かった政治的独立」、フランス革命は「内を変えた社会革命」でした。


共通していたのは、人々が自らの政治的権利を主張し、そのために行動した点。その結果、18世紀末の世界は「人民の意思が国家を動かす」という新しい時代へと踏み出したのです。