フランス革命の選挙権への影響とは？

フランス革命は、身分制のもとでごく一部に限られていた選挙権の概念を広げ、「国民が政治に関わる」という意識を社会全体に根づかせました。ただし、その道のりは一足飛びの完全平等ではなく、制限選挙と普通選挙の間を揺れ動くものでした。

革命前の選挙権

旧体制のもとでは、国政に直接影響を与える選挙制度は存在せず、三部会の代表も身分ごとに分けられ、貴族や聖職者が圧倒的に優位でした。第三身分の代表は少数で、さらに投票も身分別集計だったため、庶民の声が政策に反映されにくい仕組みでした。

制限選挙の導入

1789年の人権宣言で「主権は国民にある」と明言されると、憲法制定国民議会は選挙制度を新たに定めました。しかし1791年憲法では納税額に基づく制限選挙が採用され、一定額以上の直接税を納める「能動市民」にだけ投票権が与えられました。女性、無産階級、奉公人などは依然として政治から排除されていたのです。

1789年5月5日、ヴェルサイユで開かれた三部会
1839年にルイ・シャルル・オーギュスト・クーダーによって描かれたこの絵画は、フランス革命へと繋がる政治的変革の瞬間を捉えている。この集会では、選挙権の不公平に対抗するために第三身分が国民議会として独立を宣言し、自由と平等を求めた。
（出典：Creative Commons Public Domainより）

普通選挙への一歩

1792年、王政が廃止され第一共和政が成立すると、男性普通選挙が導入されました。成年男子であれば納税額に関係なく投票できるようになり、これまで政治に関われなかった層も意思表示の機会を得ます。ただし、この制度は政情の不安定さから長続きせず、総裁政府期には再び制限選挙へ逆戻りしました。

それでも、この期間に芽生えた「全ての国民が政治に関わるべきだ」という理念は、19世紀以降の選挙権拡大運動や民主化の流れを強く後押しすることになります。