フランス革命が「無意味」「無駄」と否定的な人がいる理由は?

フランス革命が「無意味」「無駄」と評価する人がいる理由は?

フランス革命は大きな犠牲を払ったにもかかわらず、安定した民主体制をすぐには築けなかった。この点が一部で無意味・無駄と評される要因である。本ページでは、フランス革命に対する否定的評価の根拠を理解する上で重要なこのテーマについて、さらに詳しく掘り下げ解説していく。

フランス革命って「自由・平等・博愛」の理想を掲げた、すごく意義のある出来事だと教わったけど──一方で「無意味だった」「結局ムダだった」と言う人もいるって聞いてびっくりしました。国王を倒してまで革命を起こしたのに、なぜそう言われることがあるの? 何が問題視されていて、どうしてそんな否定的な見方が存在するのか、詳しく教えてほしいです!



フランス革命といえば、世界中に「人権」や「民主主義」の考え方を広めた歴史的な出来事。でも、そんな革命にも実は「意味がなかった」とか「暴力と混乱だけだった」とか、けっこう厳しい評価もあるんです。


ではなぜ、そんな否定的な見方があるのでしょうか? 歴史の流れをたどると、その理由が少しずつ見えてきます。


結局ナポレオンの独裁に戻ったから

フランス革命は、ルイ16世の処刑によって絶対王政を終わらせた…はずでした。けれどその後、国内は政権交代が激しく、恐怖政治内乱、そしてヨーロッパ諸国との対外戦争に次々と巻き込まれていきます。


混乱の末に登場したのがナポレオン・ボナパルト。彼はクーデターで政権を握ると、最終的には皇帝として君臨し、自らの手で冠をかぶります。つまり──「王を倒した革命」のはずが、新しい皇帝を生み出しただけになってしまったんです。


The Coronation of Napoleon by Jacques-Louis David

ナポレオンの戴冠式/ジャック=ルイ・ダヴィッド作
1804年、ノートルダム大聖堂で行われたナポレオン・ボナパルトの戴冠式を描いた絵画。革命が否定したはずの絶対権力の復活を象徴。
(出典:Creative Commons Public Domainより)


ナポレオンは確かに革命の成果(法典の整備や市民の平等)を守った部分もありますが、一方で言論統制や戦争拡大を進めたのも事実。こうした流れを見て、「革命って意味あったの?」と疑問を持つ人が出てくるのも、うなずける話なんです。


恐怖政治の犠牲者が多すぎたから

フランス革命のもうひとつの暗い面が、極端な暴力と処刑の連鎖です。王を処刑した後、次は「反革命分子を排除しろ!」という流れに火がつき、ロベスピエールを中心とするジャコバン派が権力を握ります。


この時期の象徴が恐怖政治。ちょっとでも「反革命っぽい」と疑われただけで、次々に処刑されるようになりました。裁判すらまともに行われない状況で、多くの市民や政治家が命を落とします。


さらに1792年には九月虐殺が発生。パリの牢獄にいた囚人たち(その多くが政治犯ではなかった)を市民たちが無差別に襲撃・虐殺するという事件が起きました。


September Massacres 1792

九月虐殺事件
1792年9月にパリで発生した虐殺を描いた絵画。この期間中に無差別に囚人が殺害され、フランス革命の恐怖政治の一環として行われた。
(出典:Creative Commons Public Domainより)


このような行き過ぎた改革は、後の世で多くの批判を受けました。「自由と平等を掲げた革命が、なぜこんなに血なまぐさいのか?」という疑問が、「革命否定論」に火をつけていったのです。


理想と現実のギャップが強すぎたから

「フランス革命は、すべての人に自由と平等をもたらした!」と言いたくなるところですが、実際にはそうならなかった層も存在します。


たとえば、女性。オランプ・ド・グージュが『女性および女性市民の権利宣言』を掲げて女性の平等を訴えましたが、結果的に処刑されてしまいます。革命政府も、女性の政治参加には冷たく、参政権などはまったく認められませんでした。


また、植民地における奴隷制もすぐにはなくならず、ナポレオン期には一時的に奴隷制度が復活さえしています。


さらに、都市部の市民階級が中心となって政治を動かすようになった一方で、地方の農民や労働者たちは、革命の恩恵を実感しきれなかったという声もあります。


つまり──「すべての人が解放されたわけではない」という現実が、「本当に革命は成功したのか?」という疑念につながっているのです。


このように、フランス革命には「人権の確立」や「市民社会の誕生」といった大きな意義がある一方で、独裁の再来・暴力の氾濫・理想と現実の乖離といったマイナス面も、はっきりと存在しています。


だからこそ、現代でも「フランス革命は無意味だったのでは?」という否定的な声が上がるのです。


でもそれは、革命がもたらした理想と矛盾を私たちがどう受け止めるか、という問いかけでもあります。「理想のために、どこまでの犠牲が許されるのか?」──この問いは、フランス革命の本質を考えるうえで避けて通れないテーマなんですね。